研究内容(公募班)

A01: シンギュラリティ細胞の計測・操作技術の開発

pHを指標にした生体内特異点の可視化を目指した蛍光プローブの創製

研究代表者 花岡 健二郎
機関 東京大学大学院薬学系研究科
専門分野 ケミカルバイオロジー
研究の目的 本研究において、生体内にて起こる特異的な生命イベントを、pH変化を指標にして、広視野かつ長時間観察することを可能にする蛍光プローブの開発を目的とする。生体内において、臓器のpHは厳密に制御されている一方、がんなどの異常部位においては活発な細胞増殖から弱酸性pHを示すなど、pHを観察することで幅広い生命現象に対して特異点を検出できる可能性がある。蛍光プローブとしては、動物での蛍光イメージングに適した650~900 nmの近赤外領域の蛍光を有し、かつ蛍光プローブの体内分布を補正するためにレシオイメージングへと応用できるように分子設計する。

ヒト幹細胞培養系に出現する異質細胞の非侵襲的検出法の開発とその出現機構の解明

研究代表者 難波 大輔
機関 東京医科歯科大学・難治疾患研究所
専門分野 幹細胞生物学
研究の目的 再生医療に用いられているヒト表皮幹細胞培養系では、幹細胞コロニー内に自己複製能を消失した異質な細胞が生まれる。この異質細胞が出現した幹細胞コロニーは、連鎖的に他の幹細胞が分裂停止し、増殖停止コロニーへと形質転換する。すなわち、均一な幹細胞集団内に生まれた一つの異質細胞=シンギュラリティ細胞が、幹細胞集団そのものを消失させる。異質細胞出現の機構は不明であるが、異質細胞は細胞運動能が低下していることが明らかとなっている。本研究では、ヒト表皮幹細胞コロニーに現れる異質細胞を、非侵襲的に細胞運動速度の変化から検出する手法を開発し、異質細胞の出現時の環境を明らかにすることで、異質細胞出現機構を解明する。

時空間トランススケールイメージングを可能にする高分子ケージドルシフェリンの開発

研究代表者 蛭田 勇樹
機関 慶應義塾大学理工学部応用化学科
専門分野 分析化学
研究の目的 時空間トランススケールイメージングの実現には、高輝度かつ長時間観察可能な発光プローブが必要不可欠である。本研究では生物発光基質フリマジンに注目し、高輝度・長期観察可能な生物発光イメージング技術の確立を目指す。フリマジンは酵素NanoLucを用いることで最高水準の発光輝度を示し、細胞小器官レベルでのイメージングを可能にした。しかし、フリマジンは酸化安定性に乏しく、動物個体における非特異的な発光、血中半減期の短さ、水溶性の低さといった問題があり、長期に渡る生物発光イメージングは達成されていない。本研究では、高分子鎖導入により水溶性・安定性・血中滞留性を向上させたフリマジン誘導体を開発する。

光音響イメージングに基づく臓器横断的なシンギュラリティ現象の解明

研究代表者 石原 美弥
機関 防衛医科大学校医用工学講座
専門分野 医用生体光学
研究の目的 光音響イメージングは、光で可視化対象を限定し、超音波で観察することで、観察深度と画像解像度にトレードオフを持たない深部イメージングが可能である。本研究では、シンギュラリティ細胞の時空間的な動態に着目する。臓器横断的な光音響4次元分光イメージング技術を確立し、不連続的な変化からシンギュラリティ細胞を探索する。


A02: シンギュラリティ現象を解析するための技術開発

シンギュラリティ細胞が率いる集団を表現する機械論的モデルの構成

研究代表者 冨樫 祐一
機関 広島大学・大学院統合生命科学研究科
専門分野 計算生物学
研究の目的 シンギュラリティ細胞は何によって生じ、集団にどのような影響をもたらすのか? その可能性を理論的に検討し明らかにすることを目的とする。特に注目するのは、細胞と環境、あるいは細胞同士での力学的な相互作用(例えば、基質の硬さや、細胞同士の「おしくらまんじゅう」)である。ナノスケールの分子機械が構造変化を介して干渉し合う系の数理モデルを出発点に、よりマクロな系である細胞集団のモデルを構築する。細胞同士が力学的に相互作用しあう中から、シンギュラリティ細胞が現れる過程とその振舞い、さらにそれが集団に与える影響を、機械論的に表現・予言できるような粗視的モデルや理論的枠組みを構築することを目標とする。

単一細胞multi-omicsによるシンギュラリティー細胞同定技術の開発

研究代表者 原田 哲仁
機関 九州大学・生体防御医学研究所・附属トランスオミクス医学研究センター・トランスクリプトミクス分野
専門分野 生化学
研究の目的 細胞分化のような連続的に細胞が変化する過程の特異点に位置する細胞(シンギュラリティー細胞)は、組織中で希少細胞として存在している。single cell RNA-seq (scRNA-seq)は、希少細胞を検出するための技術であるが、定量された転写産物が細胞内で転写中の結果なのか転写終了後の残存物としての結果なのかを判断できない(時間情報の消失)。そのため、真のシンギュラリティー細胞を検出するためには、次にどのような細胞に移行するのか予測する必要がある。そこで、本研究では単一細胞内で細胞の形質が残るクロマチン構造変化と転写産物を同時に取得することでシンギュラリティー細胞の同定と機能予測が可能な技術開発を行う。

神経回路形成時のシンギュラリティ細胞の検出

研究代表者 岡 浩太郎
機関 慶應義塾大学理工学部・生命情報学科
専門分野 神経科学・生物物理
研究の目的 「数十から100個程度」の神経細胞から構成される回路中で、全体の応答を制御するような神経細胞(シンギュラリティ神経細胞)がどのように形成されてくるのかを明らかにする。培養神経細胞について、ランダムにまず神経回路をつくり、この神経回路に適当な摂動を加えることにより「神経回路の書き換え(リプログラミング)」を促す。自己書き換えを起こさせた過程とその後に、種々の蛍光イメージング法を併用することにより、神経細胞間のシナプス接続と神経細胞のリン酸化レベルを調べる。これにより、「特異的なリン酸化パターンまたはシナプス可塑性変化を示した神経細胞はどのように形成されたのか?」を逆解析により明らかにする。

時空間モデルの推定と「予測不可能性の定量」にもとづくシンギュラリティ細胞の同定

研究代表者 近藤 洋平
機関 自然科学研究機構・生命創成探究センター
専門分野 理論生物学
研究の目的 生細胞イメージング動画内のシンギュラリティ細胞を、その振る舞いの「予測不可能性の度合い」によって同定するという手法を開発する。具体的には、組織内の細胞集団に対して力学系モデルを学習することで「平均的な細胞」のモデルを構築し、各細胞についてモデルによる予測の失敗度合いを誤差解析によって定量的に評価して「予測不可能な細胞」を見つけ出す。培養細胞シートの創傷治癒過程における細胞運動とシグナル伝達を対象に概念実証を行い、この古くから知られた現象においてシンギュラリティ細胞が果たす役割を明らかにする。


A03: シンギュラリティ現象の生物学的意義の解明

インフルエンザウイルス感染におけるシンギュラリティ

研究代表者 大場 雄介
機関 北海道大学大学院医学研究院細胞生理学教室
専門分野 細胞生物学
研究の目的 医学が大幅に進歩した現在においても、ウイルス感染症は人類が対策を怠ることができない疾病である。我々は、ウイルス粒子数を厳密に制御して感染実験を行う手法を開発し、1細胞あたりに暴露されるウイルス粒子数が20個以上と20個未満の場合で感染時に生じる宿主細胞の応答が劇的に変化することを明らかにした。本研究では、この20個/宿主細胞がウイルス感染における「特異点」、この数値を境に細胞応答の変化を「ウイルス感染のシンギュラリティ現象」と定義し、「ウイルス感染初期段階におけるシンギュラリティ細胞の役割と現実世界での感染様式」を解明する。

少数細胞が規定する膵臓がん発生過程の解明

研究代表者 園下 将大
機関 北海道大学遺伝子病制御研究所・がん制御学分野
専門分野 腫瘍学、創薬科学
研究の目的 膵臓がんはがんの中でも最も悪性度の高いがんの一つで、高い治療抵抗性を示すために治療薬の創出は極めて難航しており、研究手法および創薬手法の抜本的な変革が求められている。
そこで本研究は、「がん細胞の一部ががん促進シンギュラリティ細胞(Cancer-promoting singularity cells; CPSCs)として膵臓がん形成の促進や薬物抵抗性の発現に寄与する」という新たなパラダイムを提唱し、これを検証する。生化学的・遺伝学的・薬理学的研究基盤を最新鋭統合解析システムAMATERASと組み合わせる異分野融合により、がん発生機序研究および治療法開発の新たな方法論と技術的基盤を創出する。

ガン形成を駆動する普遍的レアイベント「倍数性逆転」の発生原理に迫る

研究代表者 上原 亮太
機関 北海道大学 大学院 先端生命科学研究院
専門分野 細胞生物学
研究の目的 細胞周期異常による染色体倍加と、その後の大幅な染色体喪失(倍数性逆転)は、広範なガンに共通する細胞異常で、不連続的な形質変化を惹起する。しかし、細胞集団中で極めて低頻度で生じる倍数性逆転を詳細に捉え追跡することは既存の手法では困難なため、倍数性逆転の発生原理と病理的意義は不明である。本研究では、高解像撮像による細胞内動態解析と長期撮像による細胞系譜の倍数性ダイナミクス追跡を同時実施できる顕微鏡システムを構築し、希少な倍数性逆転イベントを検出し、その素過程を詳細に捉え、それを惹起する希少かつ特徴的な細胞状態の特定を可能にする。これにより、謎につつまれた倍数性逆転を通した細胞ガン化機構を解明する。

発達脳のシナプス刈り込みにおけるシンギュラリティ現象のイメージング解析

研究代表者 狩野 方伸 
機関 東京大学
専門分野 神経生理学
研究の目的 生後発達期の脳神経系におけるシナプス刈り込みは、動物が環境に適応するために、神経回路を最適化する仕組みであり、小脳登上線維-プルキンエ細胞シナプスの生後発達は、その代表的モデルである。小脳のシナプス刈り込みの過程で、生き残る「勝者」のシナプスと除去される「敗者」のシナプスの決定が行われるが、これはごく限られた臨界期に起こり、一度「勝者」と「敗者」が決まると、通常では逆転は起こらないことから、典型的なシンギュラリティ現象である。本研究では、2 光子顕微鏡を用いたin vivo imaging によってこの現象を追跡し、この現象に登上線維とプルキンエ細胞の神経活動がどのように関わるかを明らかにする。

集団運動転移を先導する粘菌スター細胞とシンギュラリティ性の解析

研究代表者 澤井 哲
機関 東京大学
専門分野 生物物理学
研究の目的 細胞性粘菌の集合後の細胞塊においては、走化性遊走とは別の接触依存的な遊走機構によって、細胞の大規模な再配置が生じている。この遷移現象の開始においては、集団的運動からはずれた不規則な運動を示す細胞が少数の細胞に注目し、独自の蛍光標識手法とハイスループットの生細胞測定手法を組み合わせることによって、これを検出、同定し、その接触依存的な極性形成、運動形態ならびに、走化性と走化性誘引分子cAMPのリレー応答を特徴づける。少数の細胞の特異性が、組織全体の再配置といかに連動するのか、細胞の揃い度合いについての秩序転移と、反応拡散によって出現するcAMP振動に着目し、ミクロとマクロの関係を明らかにする。

生死を分ける脳炎発火点の解明

研究代表者 有井 潤
機関 神戸大学 大学院医学研究科 附属感染症センター 臨床ウイルス学分野
専門分野 ウイルス学
研究の目的 ウイルス性脳炎は、散発的に発生し、しばしば致死的な経過をたどる、極めて危険な疾患です。ヘルペスウイルスは、ヒトに脳炎など多彩な病態を引き起こすウイルスで、終生続く潜伏感染を成立させることが特徴とされています。しかし、人類のほぼ全てがヘルペスウイルスに感染している一方で、脳炎発症に至ることは稀です。すなわち、ヘルペスウイルスが再活性化し、脳炎が引き起こされるきっかけは不明といえます。本研究は、生体内において、脳炎発症の引き金を引く細胞(群)を特定し、その性状を明らかにすることを目的とします。本研究から、致死的なウイルス性脳炎の発症機序の理解が進み、その対策に貢献することが期待されます。

極値統計理論を用いた、外れ値免疫細胞の動態の数理解析

研究代表者 中村 直俊
機関 大阪大学・数理・データ科学教育研究センター
専門分野 数理細胞生物学
研究の目的 近年のイメージング研究の進展により、同じ種類の細胞であっても生体の中で異なる振る舞いを示す細胞間不均一性が明らかになってきた。研究代表者は、細胞の動態データから細胞間不均一性をバイアスなく図示し、細胞間の違いを司る軸を明らかにするデータ解析方法を開発している。本研究ではこれに立脚し、免疫疾患を惹起したマウスのイメージングデータに対して、外れ値となる免疫細胞を同定する。その動態を詳細に解析し、極値統計理論を用いて細胞分布の経時変化を解明して、外れ値免疫細胞の存在意義を明らかにする。

環境に応答して胚発生の司令塔オーガナイザーをオス化するシンギュラリティ細胞の同定

研究代表者 加藤 泰彦
機関 大阪大学・工学研究科
専門分野 環境分子生物学
研究の目的 甲殻類ミジンコは、親個体が感知した環境情報を幼若ホルモンを介して母性効果として次世代に伝え、性をメスからオスへと切り換える。私達は、幼若ホルモンシグナルによって嚢胚期にオーガナイザー領域で転写因子 Dsx1 が働き、これがシンギュラリティ現象となってオス化が誘導される可能性を見出した。また、シンギュラリティ現象よりも前に幼若ホルモンに応答して発現する転写因子を複数明らかにした。本研究では、ライブイメージングにより Dsx1 を含めた複数の転写因子の発現の時空間的な関係性を解明し、それぞれの転写因子の発現に人為的な摂動を与えることで、シンギュラリティ現象を制御する細胞を同定することを目的とする。

時間免疫学と1細胞解析の融合による免疫反応におけるシンギュラリティ現象の解明

研究代表者 小野 昌弘
機関 熊本大学 国際先端医学研究機構、インペリアル・カレッジ・ロンドン
専門分野 免疫学, ゲノム科学
研究の目的 T細胞は免疫反応の制御において中心的な役割を果たすが、個々のT細胞内でいつ分化運命の分岐が起きるかは殆ど不明である。本研究は、T細胞活性化・分化の特異点(シンギュラリティ)にある希少かつ独特な細胞の同定と解析を目指す。まず1細胞RNAseqデータ解析による活性化シンギュラリティ細胞の同定と、これらの細胞解析のための新規レポーターシステムの作製を行う。申請者が開発した免疫学的ゲノム解析技術とT細胞内での時間的動態を1細胞レベルで解明する技術Tockyを用いて、活性化シンギュラリティ細胞を同定、1細胞レベルのトランスクリプトームを解明、顕微鏡解析によるシンギュラリティ細胞の同定と特徴解明を目指す。

肺がんにおける腫瘍内不均一性を統括するシンギュラリティ細胞の探索と機能解析

研究代表者 山口 知也
機関 熊本大学・大学院生命科学研究部・がん生物学分野
専門分野 腫瘍生物学
研究の目的 肺腺がんは病理像から不均一な細胞集団であることが分かっているが、癌発生のはじまりは何であるのか、何を起点に癌が発生し、いかなる臨界点を超えると不均一な細胞の集団形成が認められるのか、など理解されていない点が非常に多い。そこで本研究では、これまで誰も明らかにしていない肺腺がんのシンギュラリティ細胞を起点とした腫瘍内不均一性を明らかにするため、がん組織のin vitroモデル化、及び、最新の技術や解析手法を用いた亜細胞集団の同定、さらには特徴解析を行い、将来的な新規抗がん剤開発の情報基盤の確立を目指す。

疾患特異的iPS細胞を用いたモザイシズムによるシンギュラリティ現象の解析

研究代表者 太田 悦朗
機関 北里大学・医療衛生学部
専門分野 神経科学
研究の目的 パーキンソン病(PD)の非運動症状のひとつである認知機能の低下には、Tauが関係している。本研究では、LRRK2変異をもつ優性遺伝PD 患者由来の疾患特異的iPS細胞を用いて、シンギュラリティ現象によるオリゴマーTau 伝播の証明とその変性機構を解明する。さらに、オリゴマーTau増加を呈するシンギュラリティ細胞は、変異LRRK2アリルのモザイシズムに起因しているかどうかを検証するために、iPSC由来神経細胞集団をin vitroおよびin vivo条件下で解析する。

自己免疫疾患の発症・非発症を規定する特異点の検出

研究代表者 竹馬 俊介
機関 慶應義塾大学
専門分野 免疫学
研究の目的 自己免疫疾患は、自己抗原を認識するごく少数のリンパ球(リーダー)によって開始され、抗原タンパクの新たなエピトープや別タンパクを認識する、より多数の細胞(フォロワー)が活性化し、やがては抗原非特異的な炎症へ移行して起こると考えられる。しかしながら、長期間にわたって徐々に起こる「抗原性の広がり」と、最終表現型としての自己免疫疾患発症との関連を観察することはきわめて困難である。本研究では、限られた特異性を持つリンパ球によって自己免疫反応を惹起し、発症に至るまでの「抗原性の広がり」を観察することを試みる。疾患発症・非発症を規定する、自己反応性細胞の、数の境界点を探索することを目的とする。

がん細胞が出現した正常間質組織でのシンギュラリティ現象の解明

研究代表者 昆 俊亮
機関 東京理科大学 生命医科学研究所 発生及び老化研究部門
専門分野 腫瘍生物学
研究の目的 腫瘍組織は特殊な微小環境が整備されており、がん細胞によって教育された間質細胞が腫瘍進展に有利に作用する。しかしながら、がん細胞が基底膜を通過し間質内へと浸潤したとき、即ちがん細胞が正常間質細胞と初めて接触した際にどのような相互作用が生じるかはよく分かっていない。我々の予備的研究結果より、正常間質組織は悪性度の低いがん細胞に対しては抗腫瘍的に機能するのに対し、悪性度の高いがん細胞は「シンギュラリティ細胞」として、正常間質からがん間質へと臨界現象をもたらすことが示唆された。そこで本課題では、ex vivoイメージングやオミクス解析を駆使し、腫瘍細胞社会形成の超初期に生じるシンギュラリティ現象を解明する。

てんかん発作を惹起するシンギュラリティ構造の同定と制御

研究代表者 六車 恵子
機関 関西医科大学・医学部
専門分野 神経科学、発生生物学、幹細胞生物学
研究の目的 てんかんは神経細胞の過剰興奮による発作を病態とする神経疾患であるが、発作の発生機構、予防法、根治療法は未だ不明である。本研究では、てんかん発作を、安定な定常状態から何らかの刺激をトリガーとして異常興奮状態に遷移するシンギュラリティ現象として捉えることで、病態の解明と予防・治療法の開発を目指す。iPS細胞の分化誘導技術を駆使して、てんかん発作現象をできるだけ忠実に再現する培養系を構築し、現象を精密に計測し、詳細に解析することで、発作の惹起機構を解明する。さらに、介入・操作による発作の制御を試み、発作を予防・停止・軽減するための手法を探索する。

シンギュラリティシナプスの探索と機能解析

研究代表者 村越 秀治
機関 自然科学研究機構 生理学研究所
専門分野 神経科学、生物物理
研究の目的 海馬や大脳皮質の興奮性神経細胞上には数千個以上のシナプス(スパイン)が存在しており、多数のシナプスからの入力を同時に受けることで活動電位を発生する。一方で、我々は最近、個々のスパインの反応性に大きなバラつきがあり、入力に対して極めて大きな出力を生むものが存在していることを見出しつつある。本研究の目的は、入力信号を大きな出力に変換し、細胞状態を大きく変えるようなキーとなるスパイン(シンギュラリティスパイン)を最先端の光学顕微鏡を駆使することで同定しその分子メカニズムを明らかにすることである。

METイベントのリアルタイム評価系を用いたシンギュラリティ環境の特異性の理解

研究代表者 髙里 実
機関 理化学研究所・生命機能科学研究センター
専門分野 幹細胞生物学
研究の目的 腎臓発生の過程で、腎臓前駆細胞である腎間葉系前駆細胞は、間葉上皮転換(MET)をすることでネフロンという腎臓の機能を担う上皮構造へと発達する。我々はこれまでの研究で、ヒトiPS細胞から誘導した腎間葉系前駆細胞にカノニカルWnt刺激を与えることで、in vitroでMETを起こす系を作成した。そして、このMETが、一見均一な細胞から構成される集団内部で、一定であるが、とても低い確率でしか発生しないシンギュラーなイベントであることを突き止めた。本研究計画では、このユニークな上皮化のシンギュラリティイベントの人工発生系を用いて、シンギュラリティイベントの発生を司る環境特異性の実体を解明することを目指す。

マルチモーダル生体イメージングシステムを活用したタウ蛋白質相転移メカニズムの解明

研究代表者 佐原 成彦
機関 量子科学技術研究開発機構・放射線医学総合研究所
専門分野 神経化学、認知症学
研究の目的 老年性認知症病態の大半を占める凝集性タウタンパク質の脳内蓄積は神経機能障害や細胞脱落と密接に関連していることが知られているが、生理的に微小管結合能を有するタウがどのように自己凝集能を獲得し、病的なタウが特定脳領域より拡散・伝播するのか、その技術的特異点(原因と進行過程)は明らかになっていない。本研究では、タウ蛋白質相転移(正常から異常への変換点)がタウ毒性の本体であると仮定し、PET、MRI、二光子顕微鏡などの生体イメージング技術を用いてrTg4510マウスにおけるタウ病変発症の技術的特異点を同定することを目的とする。