研究内容(後期公募班)

A01: シンギュラリティ細胞の計測・操作技術の開発

カルシウムシグナルが駆動するウイルス感染のシンギュラリティ現象の解析


研究代表者 藤岡 容一朗
機関 北海道大学大学院医学研究院
専門分野 細胞生物学
研究の目的 現在SARS-CoV-2が世界を席巻しているが、ウイルス感染症は人類が対策を怠ることができない疾病である。我々はこれまでにインフルエンザウイルス宿主侵入機構の大部分を解明している。その過程で、ウイルス粒子数を制御した条件下で感染と細胞応答を定量解析する系を開発し、1細胞あたりに曝露されるウイルス粒子数の多寡で感染効率と細胞応答が劇的に変化することを明らかにした。本研究では、この「特異点」を境に生じる細胞応答の変化を「インフルエンザウイルス感染のシンギュラリティ現象」と定義し、「ウイルス感染におけるシンギュラリティ細胞の役割と現実世界での感染様式の理解」という命題に挑む。

接着シンギュラリティ細胞の動態から分子まで捉えるネットワーク化計測


研究代表者 太田 禎生
機関 東京大学先端科学技術研究センター
専門分野 光学、流体工学、細胞解析
研究の目的 多細胞システムの形態・動態が変化するシンギュラリティ現象を捉える目標の上で、接着細胞系は見過ごせません。これに対し、1細胞遺伝子解析分野においてSpatial Transcriptomicsの技術発展へと世界は動いていますが、私たちの知る限り、接着細胞に対するライブイメージングとのマルチモーダル計測は未だ困難です。
本研究では、ライブイメージングにより接着状態のシンギュラリティ現象・細胞を観察・特定し、さらにシークエンシング技術によりシンギュラリティ細胞と周辺細胞の内在状態を捉えられる、マルチモーダル細胞解析技術の開発を目指します。

幹細胞培養系に出現するシンギュラリティ細胞の検出および解析技術の開発


研究代表者 難波 大輔
機関 東京医科歯科大学
専門分野 幹細胞生物学
研究の目的 再生医療に用いられているヒト表皮幹細胞培養系では、幹細胞コロニー内に自己複製能を消失した異質な細胞が生まれる。この異質細胞が出現した幹細胞コロニーは、連鎖的に他の幹細胞が分裂停止し、増殖停止コロニーへと形質転換する。すなわち、均一な幹細胞集団内に生まれた一つの異質細胞=シンギュラリティ細胞が、幹細胞集団そのものを消失させる。本研究では、我々が独自に開発した自動細胞追跡システムDeepACTによって、ヒト表皮幹細胞コロニーに現れる異質細胞が誕生した瞬間を明らかにし、異質細胞出現機構を解明する。

マルチタスクかつハイスループットな特徴を持つ光操作技術の創生


研究代表者 竹本 研
機関 三重大学大学院医学系研究科生化学分野
専門分野 神経化学・神経生理学
研究の目的 シンギュラリティ現象を捕捉するには、トランススケールなイメージング技術が重要である。一方でその生理的意義や因果関係の解明には、シンギュラリティ細胞やその周辺細胞に発現する分子に対し、局所かつ任意のタイミングで摂動を与える光操作法が必要であろう。よって今後のシンギュラリティ生物学の発展には、様々な分子に対する光操作法を迅速に開発できると共に、複数の分子を自在に操作可能な新技術が不可欠と考えられる。そこで本研究では、申請者が研究成果を積み重ねた光による分子不活化技術CALI法を基に、ハイスループットかつマルチタスクな操作が可能となる新しい光操作法の開発を目指す。

2つの生体内刺激の同時検出を可能にする分子プローブの創製とがん幹細胞の悪性度評価


研究代表者 三木 康嗣
機関 京都大学大学院工学研究科
専門分野 分子イメージング
研究の目的 がん幹細胞は通常のがん細胞と異なり薬物耐性が高いため、がんの増殖や再発に大きく関与していると言われる。我々は、がん幹細胞で過剰発現するアルデヒド脱水素酵素(ALDH1A1)に応答し発光する分子プローブを創製し、これががん幹細胞の検出、分取に利用できることを明らかにした。本研究では、がん幹細胞の中で起こる特異な生命現象を突き止めるため、2つの生体内刺激に応答し発光する分子プローブを創製し、悪性度の高いがん幹細胞の特性を解明する。また、開発するプローブ分子群を活用し、領域内で注目されるシンギュラリティ細胞の検出や生命現象の解明に貢献する。

自己反応性シンギュラリティT細胞をラベリングする新規システムの構築と動態解析


研究代表者 田中 伸弥
機関 九州大学生体防御医学研究所免疫ゲノム生物学分野
専門分野 免疫学
研究の目的 自己免疫疾患は、末梢リンパ組織に存在する自己反応性リンパ球が、何等かの原因で活性化することによって引き起こされる。従って、生体は、極めて稀なある特定の自己反応性リンパ球(自己反応性シンギュラリティリンパ球) の制御不全が、個体生存に危機をもたらす危険性を常に内包している。よって、この自己反応性シンギュラリティリンパ球の制御について明らかにする必要があるが、それらリンパ球を同定する手法は確立されていない。本研究では、T細胞活性化を検出するセンサーを構築し、自己免疫疾患モデルに適用することで、自己反応性T細胞を同定し、その動態の解明を目指す。

時空間トランススケールイメージングを可能にする超分子ケージドルシフェリンの開発


研究代表者 蛭田 勇樹
機関 慶應義塾大学理工学部応用化学科
専門分野 分析化学
研究の目的 時空間トランススケールイメージングの実現には、高輝度かつ長時間観察可能な発光プローブが必要不可欠である。本研究では生物発光基質フリマジンに注目し、高輝度・長期観察可能な生物発光イメージング技術の確立を目指す。フリマジンは酵素NanoLucを用いることで最高水準の発光輝度を示し、細胞小器官レベルでのイメージングを可能にした。しかし、フリマジンは酸化安定性に乏しく、動物個体における非特異的な発光、血中半減期の短さ、水溶性の低さといった問題があり、長期に渡る生物発光イメージングは達成されていない。本研究では、超分子複合化による水溶性・安定性・血中滞留性を向上させたフリマジン誘導体を開発する。

3次元空間でのシンギュラリティ細胞特定のための光音響イメージング


研究代表者 石原 美弥
機関 防衛医科大学校
専門分野 イメージング
研究の目的 シンギュラリティ細胞の特定に資するイメージング技術を開発し、細胞の動態を明らかにすることを目的としている。具体的には、光音響イメージングを適用し、2次元イメージングから3次元に拡張する。加えて、光音響自家信号の有効活用を図る。

A02:  シンギュラリティ現象を解析するための数理・情報技術開発

位置情報を保持したシンギュラリティ細胞の遺伝子発現測定技術の開発


研究代表者 原田 哲仁
機関 九州大学生体防御医学研究所
専門分野 オミクス生物学
研究の目的 組織中で希少細胞として存在すると考えられるシンギュラリティ細胞とその周囲に存在する細胞を単一細胞レベルでプロファイリングすることは、シンギュラリティ細胞が集団として異質な細胞なのか、集団として押し出された結果なのか、その起源を知るうえで必須である。顕微鏡下で観察されたシンギュラリティ細胞を単一細胞レベルでシンギュラリティ細胞と周辺細胞を同時にラベリングすることで、より精度の高いシンギュラリティ細胞の同定と計測が可能となると考えられるが、これまでにその報告例はない。本研究では、光照射ピッキングによる細胞バーコーディングによるRNA-seq法の開発とその技術供与を行う。

A03: シンギュラリティ現象の生物学的意義の解明

レム睡眠制御細胞を起点とした脳の生理と進化のシンギュラリティ


研究代表者 林 悠
機関 筑波大学
専門分野 神経科学、睡眠医科学
研究の目的 レム睡眠は一部の脊椎動物に固有な生理状態である。レム睡眠中は脳や全身の状態が覚醒中やノンレム睡眠中とは大きな異なっており、しばしば鮮明な夢を生じる。レム睡眠は新生児期に多く、その後に急減することから、脳発達への関与が期待される。本研究では、我々が同定したレム睡眠の誘発に関わる脳の神経細胞群が、①少数の細胞でありながら、レム睡眠時の全身の状態変化をすばやく誘導できるメカニズムの解明と、②これらの細胞が進化の過程で誕生したことが、レム睡眠を生み出し、脊椎動物のその後の大脳発達の進化の大きな転換点をもたらす「シンギュラリティ」であった可能性の検証を目指す。

シンギュラリティ細胞の脱分化による組織維持・再生機構の解明


研究代表者 中西 未央
機関 千葉大学大学院医学研究院
専門分野 幹細胞生物学
研究の目的 幹細胞と前駆細胞は組織の状態に応じて各々の役割を劇的に変化させる。例えば造血系では定常状態では各種の前駆細胞が、骨髄傷害後の再生時には幹細胞が造血を中心的に担うが、このような幹前駆細胞間のバランス調節のメカニズムは不明である。研究代表者は最近、ヒトES細胞の一部に前駆細胞様の分画を発見し、この前駆細胞の一部が幹細胞へと脱分化して、幹前駆細胞間の動的なバランス制御を担っていることを見出した。そこで本研究ではこのES細胞における発見を組織幹前駆細胞へと敷衍し、脱分化能をもったシンギュラリティ前駆細胞による組織維持・再生と、その未知の制御メカニズムを造血幹前駆細胞をモデルとして明らかにする。

デジタルウイルス増殖機構の解析


研究代表者 丸鶴 雄平
機関 東京大学医科学研究所
専門分野 ウイルス学
研究の目的 ウイルスは宿主細胞に侵入後ウイルス粒子を構成する蛋白質群を発現する。これらの蛋白質群は細胞内で集合しウイルス粒子を形成する為、細胞内のウイルス粒子数はウイルス蛋白質濃度に依存することが考えられる。我々は細胞内の感染性ウイルスの量が、ウイルス蛋白質濃度がある値(特異点)を超えると劇的に増加することを見出した。つまり、感染細胞はウイルス産生の”ON”と”OFF”が区別可能であり、「ウイルス増殖」は「ウイルス産生がONとなった細胞数が増加すること」と捉え直すことができる。本研究ではこの概念を「デジタルウイルス増殖」と定義し、その実態をオミックス解析やイメージング技術によって解明することを目的とする。

脳腫瘍細胞の進展を決定づけるシンギュラリティ現象の実態解明


研究代表者 上阪 直史
機関 東京医科歯科大学
専門分野 神経生理学・腫瘍生物学
研究の目的 脳腫瘍細胞は極めてまれに変異が生じた1個あるいは少数の正常細胞が変化することで発生し、進展(脳内への浸潤や悪性化)すると不可逆的に動物個体に重篤な被害をもたらす。少数の脳腫瘍細胞がシンギュラリティ細胞であり、それらの細胞が進展する過程にシンギュラリティ現象が存在するはずである。最近、脳内微小環境において腫瘍細胞と正常細胞の間で直接的・間接的にネットワークが形成され、それらのネットワークが腫瘍の進展に影響を及ぼす可能性が報告され、大きな注目を集めている。本研究では脳腫瘍細胞と正常細胞がつくるネットワークの活動が変遷し、その変遷がシンギュラリティとなり腫瘍の進展を決定づける、の仮説を検証する。

あまのじゃく細胞から紐解く藻類走光性の生理的意義


研究代表者 若林 憲一
機関 東京工業大学
専門分野 細胞生物学
研究の目的 モデル単細胞緑藻クラミドモナスは、細胞内活性酸素種(ROS)の蓄積量変化に応じて走光性と正と負(光源に向かうか、逃げるか)の符号を入れ替える。しかし、光合成の副産物であるROS蓄積量が多いときに正の走光性(よりROSが産生される)を示すという調節は、一見すると自殺行為に見える。この行動の生理的意義を、2つの研究で明らかにしたい。①光照射時間とともに多数派の細胞が示す符号変化と、細胞内ROS蓄積量の連関を明らかにする。②野生株と異なり、ROS蓄積量が少ないときに正、多いときに負の走光性を示す変異株の表現型および原因遺伝子を解析する。

表現型追跡技術が解き明かすがん治療耐性化のシンギュラリティ


研究代表者 加藤 真一郎
機関 名古屋大学・大学院医学系研究科 分子細胞免疫学/5D細胞ダイナミクス研究センター
専門分野 腫瘍生物学
研究の目的 がん治療耐性化は、がん進化ダイナミクスそのものであり、特定の遺伝子・表現型を持つ極少数のがん細胞の誕生によって初めて達成されるシンギュラリティ現象であると考えられる。全がん細胞が潜在的に持ちうる耐性化能がいつ、どの細胞に、どのように顕在化されるであろうか?本研究では、発現型バーコード技術によって全がん細胞を個別バーコードラベル化することで、1細胞転写ランドスケープレベルでのリネージトレーシングとトランスクリプトーム解析を同時に実現し、「遡及型」細胞表現型追跡技術を確立する。時空を超えて同一がん細胞が辿る細胞形質動態を観測し、耐性化・再発を主導するシンギュラリティ細胞の捕捉・理解・制御に挑む。

概日時計が制御するシンギュラリティー神経回路の探索


研究代表者 小野 大輔
機関 名古屋大学環境医学研究所
専門分野 神経科学、生理学、時間生物学
研究の目的 マウスを低温環境下で絶食条件にすると、能動的低代謝を示し体温が一時的に低下する。この能動的低代謝状態を“日内休眠”と呼ぶ。日内休眠の調節には低温および絶食に加え、概日時計の関与が示唆されているが、そのメカニズムはよくわかっていない。そこで、低温・絶食により蓄積する休眠負債が作用する神経細胞と、概日時計により制御される神経細胞がオーバーラップする神経細胞群を、日内休眠を誘導するシンギュラリティー細胞と定義し、光遺伝学や新規発光カルシウムプローブを用い7千万あるというマウスの神経細胞の中からその細胞と神経回路を見つけ出す。

組織修復の時空間制御を司るシンギュラリティ細胞の解析


研究代表者 榎本 将人
機関 京都大学大学院・生命科学研究科
専門分野 遺伝学・細胞生物学
研究の目的 損傷上皮の修復は、炎症・増殖・上皮化など多様な生体応答を時間軸に沿って引き起こす複雑な生体システム変化である。しかし、組織修復がどのように時空間的に制御されているのか、その分子メカニズムについては不明な点が多い。我々は最近、ショウジョウバエの損傷上皮の細胞集団の中に、組織修復を駆動する希少な細胞を発見した。興味深いことに、これの少数細胞群は、正常上皮では発現が抑制されている転写制御因子を発現していた。そこで本研究では、ショウジョウバエ上皮をモデルとして組織修復を促進する「シンギュラリティ細胞」の出現機構とその役割を遺伝学的手法・生体ライブイメージング技術を駆使しながら解析する。

生殖細胞集団動態のシンギュラリティを生み出す運動能プロファイル


研究代表者 平島 剛志
機関 京都大学白眉センター・生命科学研究科
専門分野 生物物理学、発生生物学
研究の目的 哺乳類の精子は、精巣上体管内を通過することで運動能を獲得する。この過程は、精子の生殖機能の獲得という極めて重要なシンギュラリティ現象を含むにも関わらず、未解明な点が多い。研究代表者はこれまでに、マウスの精巣上体管内で特徴的な精子集団流れが形成されていることを見出している。本研究では、蛍光ライブイメージングと数理モデル解析により、生殖機能獲得に結びつく精子集団流れの生成機構を明らかにすることを目的とする。

発生時計シンギュラリティ現象の解明


研究代表者 荻沼 政之
機関 大阪大学微生物病研究所
専門分野 発生生物学/代謝、内分泌学
研究の目的 動物胚の内部には胚発生の進行度を正確に測る時計機構が存在し、その時間情報を指標に発生速度をコントロールしていると考えられるがその分子実態は不明のままである。私は最近、小型魚類胚を用いて胚発生の全体速度を統合する分泌因子である「速度コントロール因子」を発見した。そこで本研究は胚が透明であり細胞内の分子挙動から組織形成、胚全体での発生過程を同時に観察する事ができる小型魚類モデルを用いて、速度コントロール因子を分泌する発生時計司令塔細胞し、細胞、組織、全体の速度同調機構(発生時計シンギュラリティ現象)を解明する。

“パイオニア”動物でひもとく海から淡水、陸上への進出をもたらしたシンギュラリティ


研究代表者 坂本 竜哉
機関 岡山大学牛窓臨海実験所
専門分野 海洋生物学
研究の目的 扁形動物は、左右相称動物の起源に近く、初めて本格的に、淡水、陸上に進出した。我々は、体液調節型の脊椎動物とは異なる進化軸を辿り、順応型とされてきた広塩性の軟体動物等が、抗利尿ホルモン様ペプチドによる尿の制御等を介して体液調節できること、扁形動物の広塩性ヒラムシでも、祖先型抗利尿ホルモン系が抗脱水に必須であることを見出した。この“抗利尿ホルモン→腎臓”を、新しい水・塩分環境へ進出できたシンギュラリティの原型として提唱し、ヒラムシの数㍉の単純な体制を活かし、分子・細胞基盤を解明する。これと哺乳類の場合等との相違を検討し、個体のみならず、動物全体の進化における体液調節の共通原理の介入を理解する。

神経精神疾患発症における免疫応答によるシンギュラリティ現象


研究代表者 伊藤 美菜子
機関 九州大学生体防御医学研究所アレルギー防御学分野
専門分野 神経免疫学
研究の目的 アルツハイマー病はAmyloid betaやリン酸化Tauによる凝集体をもつシンギュラリティ細胞が出現し、何らかの刺激により拡大していくシンギュラリティ現象である。様々な中枢神経系疾患に多種多様な免疫細胞が関与していることが明らかになってきた。アルツハイマー病モデルマウスの脳内でT細胞浸潤が亢進しており、免疫応答と神経疾患発症との関与が示唆される。また、炎症性腸疾患を起こすとアルツハイマーの病態が悪化する。ヒトでも炎症性腸疾患が認知症のリスクとなることが報告されたがメカニズムは不明である。そこで本研究では、神経変性疾患の発症のカギとなるシンギュラリティ細胞の拡大を制御する免疫応答の解明を目指す。

現象新規技術を用いたT細胞の時空間動態測定による免疫系シンギュラリティ現象解明


研究代表者 小野 昌弘
機関 熊本大学・インペリアルカレッジロンドン
専門分野 免疫学
研究の目的 T細胞は抗原を認識すると様々な免疫細胞を活性化して抗原に対する特異的な免疫反応を引き起こす。T細胞の抗原受容体であるT細胞受容体は遺伝子再構成により大きな多様性をもち、個々の抗原に特異的なT細胞の数は数十から数千個と大変少ないと考えられる。この少ないT細胞が抗原特異的な免疫反応の制御において中心的な役割を演ずる。本研究は、稀なT細胞が抗原を認識して活性化したのち、一時的に活性化シンギュラリティ細胞として免疫反応を牽引する可能性を検討する。

眼の進化におけるシンギュラリティ現象の解析


研究代表者 小柳 光正
機関 大阪市立大学大学院理学研究科
専門分野 光生物学、分子進化学
研究の目的 眼は、最も複雑で精巧な器官の一つで、また、動物によって形やしくみなど多種多様である。このような複雑な表現型がどのような進化プロセスを経て生じるのかは、進化学における重要課題であるが、実験的に調べることが難しいため、未だ大部分は不明である。そこで本研究では、眼の基本要素である光受容細胞を、眼の進化におけるシンギュラリティ細胞ととらえ、眼を持たない線虫C. elegansに、光遺伝学を応用して眼点(光感覚)を付与し、光感覚に関する選択圧をかけることで、より高度な光受容器官への進化プロセスの創発、すなわち、「光受容細胞の獲得から眼の進化プロセス」の再現を目指す。

疾患特異的iPS細胞を用いた神経炎症を引き起こすシンギュラリティ現象の解析


研究代表者 太田 悦朗
機関 北里大学・医療衛生学部
専門分野 神経科学、分子生物学、免疫学
研究の目的 運動異常や自律神経障害を来すパーキンソン病(PD)では、患者のうち30%程度において認知症の症状がみられる。この非運動症状のひとつである認知機能の低下には、Tauが関係している。本研究では、LRRK2変異をもつ優性遺伝PD 患者由来の疾患特異的iPS細胞を用いて、シンギュラリティ現象によるオリゴマーTau 伝播と神経炎症メカニズムを解明する。さらに、オリゴマーTau増加を呈するシンギュラリティ細胞は、変異LRRK2アリルのモザイシズムに起因しているかどうかを検証するために、iPSC由来神経細胞集団をin vitroおよびin vivoで解析する。

臓器形成における自発的対称性の破れをオルガノイドモデルで明らかにする


研究代表者 今泉 研人
機関 慶應義塾大学
専門分野 神経発生生物学、幹細胞生物学
研究の目的 我々の体は、初めは均質な細胞集団であるが、空間的な対称性が崩れ、極性を有することで、複雑な臓器構造を獲得する。この極性の獲得において、オーガナイザーと呼ばれる少数の細胞が核となり、臓器全体に影響を及ぼすことが知られている。我々はこれまでの研究で、オルガノイド技術を用いることで、オーガナイザーは同時に複数の場所でランダムに出現するが、次第に特定の場所に局在することで、空間的な対称性を破ることを見出している。本研究では、このオーガナイザーが空間的に局在していき、対称性を自発的に破る現象が生起されるメカニズムの解明を目指す。

自己免疫疾患の発症・非発症を規定する特異点の検出


研究代表者 竹馬 俊介
機関 慶應義塾大学
専門分野 免疫学(自己免疫・腫瘍免疫)
研究の目的 自己免疫疾患は、自己抗原を認識するごく少数のリンパ球(リーダー)によって開始され、抗原タンパクの新たなエピトープや別タンパクを認識する、より多数の細胞(フォロワー)が活性化し、やがては抗原非特異的な炎症へ移行して起こると考えられる。しかしながら、長期間にわたって徐々に起こる「抗原性の広がり」と、最終表現型としての自己免疫疾患発症との関連を観察することはきわめて困難である。本研究では、限られた特異性を持つリンパ球によって自己免疫反応を惹起し、発症に至るまでの「抗原性の広がり」を観察することを試みる。疾患発症・非発症を規定する、自己反応性細胞の、数の境界点を探索することを目的とする。

ホヤ変態開始機構の定量解析


研究代表者 堀田 耕司
機関 慶應義塾大学理工学部生命情報学科
専門分野 発生生物学
研究の目的 さまざまな生命現象において、異なるフェーズ間を仲介する特異点(シンギュラリティ)には、「2段階」のシグナルによって次のフェーズへの移行をトリガーするメカニズムがあります。動物の変態もまた、個体発生におけるシンギュラリティ現象の1つと見なされますが、外部の変態の合図を内部シグナルに変換する機構は不明です。私はホヤが付着器への継続的な機械的刺激によって変態を誘導できることを発見し、刺激から変態がどのように起こるかを定量的に分析できる実験系を構築しました。本研究ではホヤにおける2段階のCa2+上昇による変態開始機構を解明するために、分子/細胞のダイナミクスを可視化・定量解析します。

がん細胞が出現した正常間質組織でのシンギュラリティ現象


研究代表者 昆 俊亮
機関 東京理科大学
専門分野 がん細胞生物学
研究の目的 上皮層に発生したがん細胞は、組織間質内へと浸潤し、腫瘍進展に有利な微小環境を整備する。しかしながら、正常間質にがん細胞が誕生した際、がん細胞と正常間質細胞との間でどのような細胞間相互作用が生じるかはよく分かっていない。我々のこれまでの予備的な研究成果より、正常線維芽細胞は悪性度の低いがん細胞に対しては抗腫瘍的に機能するのに対し、悪性度の高いがん細胞は「シンギュラリティ細胞」として、正常間質からがん間質への臨界現象を惹起することを示唆する結果が得られている。そこで本課題では、exvivoイメージングやオミクス解析を駆使し、腫瘍細胞社会形成の超初期に生じるシンギュラリティ現象を解明することを目的とする。

シンギュラリティシナプスの人為的構築とその制御


研究代表者 武内 恒成
機関 愛知医科大学医学部
専門分野 神経科学、再生医療、細胞生物学
研究の目的 中枢神経の損傷、特に脊髄損傷後機能回復を目指した再生医療において、我々は①神経再生を阻害する因子の発現を抑える医薬開発、②興奮性シナプスを接続する人工シナプスコネクターの開発、の二つを融合した解析③を進めている。これは狙った場に狙ったタイミングでシナプスを形成することを可能とする。ここで形成されたシナプスが、再生過程でいかなる神経機能再編と生理機能に反映するかを追跡する。

腎ネフロン形成現象を司るリーダー細胞の同定と特異性の理解


研究代表者 髙里 実
機関 理化学研究所生命科学研究科研究センター
専門分野 発生生物学
研究の目的 腎臓発生では、腎間葉系前駆細胞が間葉上皮転換(MET)し、ネフロンという腎機能を担う上皮構造へと発達する。我々はこれまでに、ヒトiPS細胞から誘導した腎間葉系前駆細胞にカノニカルWnt刺激を与えることで、in vitroでMETを起こす系を作成した。そして、このMETが、一見均一な細胞から構成される集団内部で、一定かつ非常に低い確率でしか発生しないシンギュラーなイベントであることを突き止めた。本研究計画では、我々が樹立したMETをリアルタイムに観察可能なレポーターiPS細胞とMETイベントの人工発生系を用いて、シンギュラリティイベントの発生を司るリーダー細胞の実体を解明することを目指す。

ニューロンーミクログリア連関の破綻を起因としたタウ蛋白質相転移メカニズムの解明


研究代表者 佐原 成彦
機関 量子科学技術研究開発機構
専門分野 神経化学、認知症学
研究の目的 ヒト脳では、加齢とともに神経細胞やグリア細胞の中でタウ蛋白質が自己凝集して線維状の凝集物ができるが、並行して、ミクログリアやアストロサイトの活性化による神経炎症も発症する。近年、凝集タウを検出できるPETトレーサーも開発されているが、未だ、凝集初期過程の検出には至っていない。特に、生理的で、正常なタウが、どのように相転移を起こして、異常凝集能を獲得するのか、メカニズムは不明である。一方で、我々はタウ凝集に先んじて恒常性ミクログリアが消失することを突き止めており、この研究をさらに進展させることで認知症におけるミクログリア動態のシンギュラリティーポイント同定を目指す。